静岡県のAさんからのご質問と私の回答 (その1)
静岡県の方で、VBTJのために働いてくださっているAさんから、下記の質問がありました。
“宣教の対象であるところのベトナム人の事がよく分からないと、うまくいかないと思います。
(A) 日本に来たいというベトナム人たちが望んでいる事、
(B) ベトナムの国民性、文化、生活で知っておいた方が良い事、
は何ですか?”
この質問への回答には具体性が必要で、私が見たベトナム人を書かねばなりません。
今まで、可能な限り情報の提供に徹する事で客観性を持たせようと控えてきたのですが、
書いてみる時期なのだろうと思いました。
という事で、ベトナム人と結婚して15年間ホーチミン市に在住している私の回答としては;
(A)
ベトナム人で日本に行く人は、技能実習生・留学生のビザの区分に関わらず
実際、“働きに行く人”と“学びに行く人”で、社会的な階層が違います。
ベトナムは、共産党員=役人=貴族による統治で、あたかもローマ帝国のような感じだと思います。
学びに行く人は、ある意味、貴族階級です。経済的に余裕があり、最終的には
日本に住みたいと思っているはずです。日本人が米国や豪州に留学するのと同じです。
働きに行く人も日本に住みたいとは思っているはずですが、お金を稼ぐのが目的ですから、
もし稼げるのであれば、ベトナムに帰ってきたいと思っているはずです。
2016年にある大学の准教授から聞いたのですが、調査の結果、既に日本に定住していても
65%のベトナム人は、いつかはベトナムに帰りたいと思っているとの事でした。
(一方、95%の在日ネパール人は母国に帰りたいとは思っていないとの事でした。)
一般的に、貧しい方が家族のつながりは強いです。わたしの妻の家も貧しかった時代の方が
家族のつながりは強かったと思います。
それゆえ、特に技能実習生の場合、どうしても“仕事に対する不満”が溜まるはずです。
近年ベトナムはあまりに景気が良くて、転職すると必ず給料が上がるという風潮があります。
https://www.viet-jo.com/news/economy/191009234331.html
平均して24%の転職率ですから、勤続4年で全社員が入れ替わるような社会です。
重要な点として、貧しい家庭の出身の彼ら彼女らの心の中には“欠乏”があります。
家族以外の人から、何かを“与えられた事”がほとんど無いのです。
逆に、不条理に、奪われ続けてきました。
(学校の先生まで裏金を取る社会です。払わないと正当な成績がつかないからです。)
この欠乏を、愛によって埋めてあげない限り、関心事は、ただ欠乏を充たす事=>日々の戦い
になってしまいます。
私も妻との関係において、最初の5年間、なぜこうも考え方が違うのかと格闘しました。
いつも、“あなたは先進国で生まれ育って良い暮らし、良い教育を受けてきたのに、
私はそうではなかった。アンフェアだ。それなのにこんな小さな事で、あなたは・・・” でした。
極貧だった時代、悪かった時代を経験した者だけが持つ、心の中のこの“どうしようもない欠乏感”に、
私は気がつきました。(5年間も掛かりましたが。。)
それで私はすべての財産を妻に渡し、給与振込みのATMカードも渡し、
私の父がそうだったように、完全お小遣い制で生きる決断をしたのです。
その結果、結婚して15年経ちましたが、我が家は今も新婚のようにラブラブです。。ハハハ:)
結論として、ベトナム人である彼ら彼女らが何を望んでいるのかというと、
(1)家族的な関係、すなわち代価のない相互サポートの関係、
(2)自分に対する取り扱いがフェアである事。
すなわち、彼ら彼女らの求めているは、“家族愛”であり、“社会的な正義”なのです。
(B)
南部出身者と北部出身者の性格の違いは知っておかねばならないと思います。
一般的に南部出身者は、あけっぴろげで後くされがないという南国気質がありますが、
一方、規範意識が北部と比べて薄いです。社会全体から許されて生きてきたので、
多くの場合、いつでも許してもらえると思っています。
良否はわかりませんが、もしかしたら旧約聖書から学んだ方が良いのかもしれません。
ベトナム北部には冬があります。北部出身者は、中国からの影響がありガッツがあり、
頑張り屋さんで、しかし、表と裏があるかもしれません。
メンツが大事です。 “教会に行く、行く”と言って、来なかったら、北部の人だと思います。
皆様が傷ついてはいけません。彼らに他意はなく、それが彼らの“お断り”なのですから。。
ちなみに南部の人は、軽く、一度は教会を“見に”来ると思います。
オモシロクなかったら、次は“行く”とは言わず、“忙しい”とか、軽い言い訳を言うはずです。
でも、南北で、救われていくのに本質的な違いはありません。
本人が、原罪に気がつかない限り、悔い改めはありません。救いは強要できないのです。
また、年率6%~7%で成長している国家は希望に満ちている事を知らなければなりません。
一昔前のデータで、ベトナム人の92%は“今日より明日は良くなる”と信じているのです。
ベトナムでは、うつ病は極めて少ないです。
更に、特に大都市ですが、もう全然貧しくありません。既にホーチミン市からの技能実習生は
とても少ない状態です。この制度は、これから5年は続くと思いますが、10年経った後には
ベトナム人の技能実習生は日本からいないか、すごく少なくなっていると思います。
これから増えるのは転勤です。日本に所在する企業は人手不足に耐えられません。
ベトナムに現地法人を作り、そこで正社員採用し、数年教育し、選抜して、社内転勤によって
日本にベトナム人の若者を送り込むはずです。今後、それが加速すると思います。
結論として、国民性は、経済の側面では1960年~70年頃の日本のようで活気にあふれ
また、日本でも県民性があるようにベトナムでも南北で違いがありますが、総じて快活です。
だいたい放蕩息子型であり、兄息子型は少ないです。(日本とは逆だと思います。)
余談ですが、相手を知らなければならないというのはとても大切な事で、
数日前の2019年度のノーベル経済学賞3名は、貧困を解決するするためには
ステレオタイプな人間理解の下にそれを論ずるのではなく、
フィールドワークを行うなど、貧困者の行動を科学的に実証した事で評価されました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191014/k10012131111000.html
私の経験や観察に基づく理解は、当然、科学的ではありません。正しくないかもしれません。
私たちクリスチャンは聖霊様を頂いています。 聖霊様は私たちに知性を与えてくださいます。
それゆえ私たちは、宣教の対象であるベトナム人の行動の裏側にある論理を知る必要があり、
学ぶ必要があるのです。(私が5年間の夫婦喧嘩の経験を通して学んだように。)
ちなみに、私の妻は、結婚した時は未信者でしたが、私がATMカードを渡した2年後の
結婚7年目くらいから教会に通うようになり、更に3年くらい経ってから受洗しました。
今、彼女の信仰と承諾があって、このVBTJができているのです。
(次回に続く)